
近年、動物性食品をとらずに植物性食品のみを食する食生活が注目を集めています。
ビーガンという言葉を聞くようにもなりましたが、昔からある精進料理とはどんな違いがあるのでしょうか。思想や内容について、詳しくみていきましょう。
精進料理とはどんな料理?

それではまず、日本の伝統的な
精進料理について解説します。
精進料理は
仏教の教えに基づいて僧侶が修行のために食べる食事でした。
精進の元々の意味は
「努力すること」でしたが、次第に
動物性の食品をとらないこと、心を清めることなどの意味へと発展していったようです。
動物性の食品をとらないというのは、仏教の修行の一つの
「戒律」を守ることに倣っています。戒律には生き物を殺さないこと、ふしだらな生活をしないことなどの教えがあります。
肉食は
「煩悩」を刺激するとし、悟りを開くためには不必要なものであり、精進=修行と考えられるなかで自然に排除されていったようです。
必ずしも精進=肉食禁止というわけではなく、
修行を突き詰めた結果ということになります。
三種の浄肉とは?
実は、修行中であっても肉食が許される場合がありました。3つの条件をクリアしていれば、戒律を破ったことにはされないそうで、修行中でも肉を食べることを許されます。その条件とは次のとおりです。
■その動物が自分のために殺されるところを見ていない
■その動物が自分のために殺されたと聞いていない
■その動物が自分のために殺された疑いがない
非常に解釈が難しいですが、何も聞かずに人伝にもらった肉は食べられる…ということになるのかもしれません。
また、うさぎが1羽2羽と数えられるのは、動物として考えないため。鳥なら食べてもよいとされていたという話もあります。
現在では、故人を忍んで初七日まで精進料理を食べるというマナー
(精進落とし)がありますが、かつては49日の忌明けまで精進料理を食べるというのが常識でした。
いくら日本人といえども精進料理を続けるには厳しい部分があります。そんな時はこのルールに倣い、「自分のために」殺されていないと考え方を変えることで肉を食することも可能ということではないでしょうか。
そのほかに禁止されているもの
精進料理では、動物性食品の他にも禁止されている食品があります。
まずは、
五辛(ごしん)と呼ばれる野菜類。
にんにく・ねぎ・にら・アサツキ・らっきょうの5つです。
これらは欲望や怒りといった感情が刺激されるとして控えるようにとされています。
次に、
香辛料もNGで
唐辛子やこしょう、生姜も使われません。
動物性食品を使わず、味が薄く刺激の少ない質素なもの…というのが精進料理の特徴といえるでしょう。ただしそれはあくまで戒律の結果であって、あえて目指したものではないという点には気をつけたいですね。
ビーガンとはどんなもの?
近年よく耳にするようになったビーガン。ビーガンとは
完全菜食主義者のことをいいます。
ただ肉や魚を食べないだけではなく、
動物から生み出されたもの(乳製品や卵)なども全く口にしません。
最近では一種のファッション的な存在となり、ダイエットをしたいからビーガンになるというような人も増えていますが、本来の意味は
「動物愛護」
動物は痛みを感じるもの。
「苦しめたり殺したりしてはいけない」との思想に基づいています。
この確固たる思想を貫くのであれば一生ビーガンでいられるはずなのですが、ダイエットや健康のために「期間限定ビーガン」になる人も増えており、そのような対応ができるレストランやカフェも人気のようです。
まとめ
精進料理とビーガン食の大きな違いは
「思想」といえるでしょう。
精進料理は仏教の教えに基づいているもので、動物性食品を食べないのは結果です。
一方で、ビーガン食は動物性食品を食べないことが目的となっています。
動物性食品は確かに脂質が多く、食べすぎると太る原因になる場合もあります。
ただ、「もともと好きなのに我慢している」という状態では長続きもしませんし、流行に乗るためやダイエットをするためにあえて動物性食品を口にしない必要性はないような気もしました。
野菜をしっかり摂ることは決して悪いことではないので、副菜のバリエーションとしてはぜひ参考にしてほしいなと思います。
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