肥満症の食事療法について

栄養管理

肥満症についてのお勉強です。

肥満は立派な病気です。

では、何をもって肥満というのでしょうか。

肥満とは単に体重が多いことではなく、脂肪組織が過剰に蓄積した状態のことです。

しかし、体内の脂肪組織の量、すなわち体脂肪を正確に測定する方法は簡単ではないので、身長、体重に基づく指数が肥満の基準として用いられてきました。

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BMIという言葉を聞いた事があると思います。

ボディーマスインデックスといいます。

これは体重を身長の2乗で割ったものです。

BMI=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)

体格指数というもので、この値が22になると一番病気にかからない健康な体であると言われています。

この値に身長の2乗をかけて出た数値は理想体重(IBW=アイディアルボディウェイト)と言われています。

BMIが25よりも上だと肥満、18.5よりも下だと痩せ分類されます。

その間の値は標準です。

あくまで身長と体重から割り出された値であって、体脂肪率や筋肉量は考慮されていません。

そこがこのBMI(ボディマスインデックス)の問題点です。

BMI値が標準でも体脂肪率が多いことを「隠れ肥満」と言われます。

反対に、BMI値が肥満の域でも筋肉量が多い人もいます。

{ 肥満の原因 }

  • 摂取エネルギーと消費エネルギーのバランス

体重は、エネルギーの摂取と消費のバランスで決まり、食事の摂取と活動量から成り立ちます。

成人ではこのバランスが維持され、体重は変化しないように調節されています。

すなわち、体重が減少すると食欲が亢進してエネルギーの消費は減少し、逆に体重が増加すると食欲が低下してエネルギーの消費は増加します。

日常の中では体重は変化しないようにできているのです。

  • 食欲調整ホルモンの乱れ

食欲の調節には脂肪細胞から出るレプチンという蛋白質が重要な役割をしています。

レプチンは脳の視床下部というところの満腹中枢にはたらいて食欲を抑えるはたらきがあり、レプチンがなくなった動物では著しい肥満になることがわかっています。

また、胃から産生されるグレリンという蛋白質が視床下部にはたらいて、レプチンとは逆に食欲を増進させることもわかってきています。

「腹ぺこ」で食欲が出るしくみはグレリンによるものだったのです。

  • ストレスが原因となることも

また、食べすぎを引き起こすきっかけとしては、ストレスが重要と考えられています。

強いストレス状態におかれると、手元にある食べ物を手あたり次第に食べてストレスを解消しようとする「気晴し食い症候群」といわれる状態がありますが、多くの肥満者が食べることでストレス解消を図っていることがわかっています。

さらに、食べすぎが続くと胃が大きくなって、たくさん食べないと満腹感が得られないようになることも問題です。さらに食べすぎて、肥満が進行する原因になります。

  • 「夜食」の習慣

夜にエネルギー摂取をしすぎてしまう「夜食型」も肥満の原因になっています。

夜は副交感神経の働きにより消化管が活発になっており食べたものが貯まりやすくなっています。

  • 運動不足

先に述べたように、消費カロリーが摂取カロリーよりも少ないと余分なエネルギーが体に蓄積され脂肪となって肥満の原因となります。

運動不足は、血糖値を下げるはたらきをもつインスリンというホルモンのはたらきを低下させてしまいます。このためインスリンの働きを弱めてしまいますが、脂肪をエネルギーに変える働きは弱まっておらず脂肪の蓄積が行われてしまうのです。

肥満は万病のもとであり、生活習慣病の根源となります。

肥満を改善するだけで色々な症状が改善されていきます。

高血圧、糖尿病、脂質異常などです。

食生活を見直し、運動と併用して体重を減らしていくことが求められます。

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{ 食事療法について }

肥満症の治療では、食事療法がその中心的役割を占めます。ただし、摂取する食事内容だけではなく、食習慣にも注意を払う必要があります。

  • 理想体重を知る。

まず、自分の理想体重は何キロなのか、知ることが必要です。

BMI値22が一番健康な状態であるので、自分の身長(m)の2乗に22を掛けます。

160cmの人なら

1.6×1.6×22です。

計算すると56.32となりますので、この場合の理想体重は(56kg)です。

*理想体重とあまりにもかけ離れている場合(過度の肥満の場合)は22ではなく25を掛けてください。その体重を達成できたときに改めて22を目標とします。

  • 1日の目標栄養量の設定

次に1日にどれだけのカロリーを摂取していいか決めます。

減食療法としては1日に1200〜1800kcalで設定することが多いです。

計算して算出するのであれば、先に出した理想体重に23〜25を掛けて出します。

理想体重が56kgの人であれば1288kcal〜1400kcalですね。

この範囲内で食事ができればほぼ間違いなく減量できると思います。

  • 栄養素の配分

難しいことは言わず、大体設定エネルギー量の中で食事をしていれば痩せてくるとは思いますが、3大栄養素だけでもバランスよく配分して食べてみましょう。

3大栄養素とは、炭水化物、たんぱく質、脂質のことをいいます。

<炭水化物>

ごはん、パン、麺類など、主食にあたる食品をいいます。

設定エネルギー量の約50〜65%くらいを目標に摂取します。

1400kcalであれば700kcal〜910kcalを炭水化物から摂ります。

この数値を更に4で割ると摂取するグラム数が出てきます。(炭水化物1gあたり4kcalになるので)

175g〜228gという量が炭水化物を摂る量になってきます。

ちなみに、ご飯を茶碗1杯(150g)食べると、その中に炭水化物は53.4g入っています。

3食食べると約160gになります。

1日で食べられる炭水化物の量が175g〜228gで、肉や魚にも少しは炭水化物が含まれているのでちょっと多いです。

ということはこの場合はご飯の量を少し減らさなくてはいけません。

難しいですが、考え方はこのような感じです。

こうやって計算していくには食品成分表を使わないとできません。

<たんぱく質>

肉や魚、卵、豆腐などメインの料理に使われるものに多く含まれます。

たんぱく質は減らしすぎると筋肉などの大事な体の組織が形成されなくなります。

標準体重1kgあたり1・0~1・2gの摂取が必要です。

理想体重56kgの人であれば56g〜67.2gの摂取です。

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<脂質>

脂肪については、ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンは脂肪といっしょに吸収されるので、1日に20gくらいの摂取が必要です。しかし、蛋白質食品を必要量とっていれば脂肪も十分に含まれているので、無理に高脂肪食品をとる必要はありません。

むしろ控えることの方が大事ですので揚げ物や脂身などは控えます。

<その他の栄養成分>

ビタミン、ミネラルの不足は体の機能異常、疲労感を起こすので、必要量をとらなければなりません。

そのためには、緑黄色野菜、豆類、乳製品を十分に摂取するとよいでしょう。

野菜は1日300gの摂取が推奨されています。

塩分は1日10gまでです。

近年は欧米化や外食、インスタント食品の食生活に変わっていて塩分の摂取量が増えてきていますので肥満じゃない人でも特に気をつけておくべきです。

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栄養価計算は一見難しいように感じますが慣れてしまえばお手の物です。

とにかく食べ過ぎに気をつけ、運動を行い、生活習慣に気をつけていれば特に過度の肥満になることはないでしょう。

早食いや夜食、間食の習慣を見直し、自分の食習慣のどこに問題があるのかを早期に見極めることが大切です。

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